地雷原のジャングルを豊かな大地に変えていく カンボジア王国編

3. カンボジア人スタッフたちに、どう技術指導すればいいのか

カンボジアの現地スタッフ(CMAC)への技術指導

現地調査や試行錯誤を経て、私たちがカンボジアに晴れて対人地雷除去機の第一号機を納入することができたのは2000年4月のことでした。しかし、機械の納入はスタートに過ぎません。プロジェクトはその先が本番。実際に地雷除去にあたるカンボジア地雷対策センター(CMAC)のスタッフに、機械の操作方法や点検方法を指導して、除去作業を彼ら自身が問題なく行えるところまで伴走しなくてはなりません。

英語で指導する日建のスタッフ

彼らの多くは30代前後の若者たち。機械について何の知識もないカンボジアの若者たちに教えるわけですから、3か月以上もかかる長丁場となりました。しかも当時、機械の数はわずか2台。日建からは会長の雨宮を含む全3名が現地に入り、十数人の現地スタッフに英語の通訳を挟みながらの指導が始まりました。

雨宮は、当時の様子をこう振り返っています。

「みんな怖いから、なかなか機械に乗ろうとしません。だからまず自分が地雷原に入って、あの日本人が乗ってるんだから大丈夫だろう、というのを見せてあげることから始めたんです」

そして、彼らに溶け込むために、同じものを食べ、酒を酌み交わしながら交流を深めていきました。

自ら運転指導をする雨宮

現地スタッフとの食事は異文化コミュニケーションをはかる絶好の機会

「大事なのは、まずは信頼関係を得ること。また、できる人よりもできない人から先に教えて、褒めて育てる。相手がどこの国の人であっても、私はこのやり方を貫いています」

技術指導は、機械の基本や運転・点検方法などを学ぶ「座学」と、実際にトレーニングセンターや地雷原で作業を行う「実技」に分かれます。ちょうど自動車教習所のようなスタイルをイメージするとわかりやすいかもしれません。

現在では、機械の数も数十台に増えたため、プログラムは座学と実技で計1か月ほど。車の運転ができる人、できない人など、個人のレベルをABCの3段階に分け、しっかりしたマニュアルに基づいた指導が行われています。また、CMACの中に技術指導ができるスタッフも増えたため、私たちが最初から教えるということも少なくなりました。

日建スタッフによる座学

懸命に運転練習をするカンボジア(CMAC) スタッフ

そして、カンボジア人スタッフの意識も大きく変わってきています。「地雷を取り除いて田んぼや畑をつくり、人々のために役に立てることがうれしい」と仕事にプライドを持つ人たちが増えてきたのです。今では15~16人の募集に10倍以上の応募があるほどで、CMACの中でも花形の職業になっているそうです。