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企業活動と社会貢献の両立
当初は採算度外視のボランティア的な視点から始まった、地雷除去機開発プロジェクト。そして現在、私たち日建は、この活動を一般的な収益事業として成り立たせる方法を模索しています。その理由と、私たちの社会貢献に対する姿勢についてお話ししたいと思います。
ボランティアとしての取り組みから
継続的な事業へと舵を切る
テレビや新聞などで、私たち日建の地雷除去に関する取り組みが報道されると、「ボランティアでやられているんでしょう。素晴らしいですね」という反応をいただくことがあります。
確かに、1995年にスタートした第一号機の開発プロジェクトは、「とにかくカンボジアから地雷をなくしたい」という採算度外視のボランティア的な発想から始まりました。
当時、油圧ショベル式の対人地雷除去機は誰も見たことすらない未知のものでした。何をするにもゼロから考えて試行錯誤を繰り返すため、開発コストは積み上がるばかり。他部門の収益で穴埋めすることで、なんとか続けているというのが実際のところだったのです。
2000年になり、カンボジアとアフガニスタンに対人地雷除去機の第一号機を納入。合計3台を販売できたとはいえ、プロジェクトのスタートから5年間で積み上がった数億円の開発コストの回収は、夢のまた夢といった状況でした。
熱心に図面チェックをする設計・開発スタッフ
高いモチベーションを保つ技術者
「このままの形で、どんどんお金をつぎ込んでいっていいのだろうか」
地雷に苦しむ人々の役に立つ機械を作り上げるという使命を胸に、昼夜を問わず開発を行うスタッフのモチベーションは高く保たれていました。しかし、開発にかかった赤字の解消すら見込めない状況が延々と続けば、いつかはその高いモチベーションが小さくしぼんでしまうかもしれません。
そこで、地雷除去機開発を本当に持続的なプロジェクトとして成立させるため、採算度外視のボランティア的な取り組みから、収益の見込める「事業」へと舵を切ったのです。
とはいえ、開発コストを回収するまでには、あと何十年もかかってしまうかもしれません。しかし、すでに世界9か国へ合計110台(※2016年3月現在)の対人地雷除去機を納入したことで、徐々に事業として成立する兆しが見えてきています。
企業活動と社会貢献の
持続的なサイクルづくりを
近年、「CSR(企業の社会的責任)」という言葉を以前にも増して耳にするようになりました。
では、大勢の社員や関係者が働く企業におけるCSR(企業の社会的責任)とはなにか。私たち日建は、企業として事業を成立させ、生まれた収益によって社会的責任のコストを負いながら、世の中に持続的に貢献していくことだと考えています。
たとえば今、日本の自動車メーカーは、各社がしのぎを削ってリッター40〜50キロも走るエコカーを開発しています。エコカーの製造販売は、無償のボランティア活動ではありません。ですが、世界の環境問題の解決につながるという意味で、社会に多大な貢献をしています。サステナビリティ(持続可能性)という観点から見ても、社会的責任を果たしている企業活動の好例でしょう。
私たちは、カンボジアでプロジェクトを始めた当初から、ただ地雷を除去するだけではいけないと考えていました。ベースとなる油圧ショベルに様々なアタッチメントを搭載することで、草木を刈り、地雷を除去し、土地を耕して整地することもできる地雷除去機を開発しています。地雷がなくなったあと、人々がその場所を農地として利用できるところまでを含めた、いわば“幸せな暮らしの再生”というビジョンを描いてきました。
様々なアタッチメントが選べる油圧ショベル型対人地雷除去機
地雷除去後の農地復興にも(アンゴラ共和国にて)
地雷除去機を販売する事業で収益をあげ、さらに優秀な機械を開発する。地雷原に暮らす人々は、畑を拡大し、作物の収穫ができるようになる。そして、貧しい暮らしから脱け出し、幸せを取り戻す―。
収益をあげる企業活動と、社会貢献はクルマの両輪のようなものです。そのどちらが欠けても、クルマはまっすぐ進むことはできません。企業活動と社会貢献の正しいサイクルを持続して、「Win—Winの関係」をつくること。これが、私たち日建の目指す社会貢献の形なのです。
フランシスコ・サントス 元コロンビア副大統領と機材納入を喜び合う